【医学論文】新型コロナウイルスの現状【ちょっと医療者向け】

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今、世の中で非常に恐れられている新型コロナウイルスについて、メディアから様々な情報が拡散されています。

その中で有用な情報があれば、時には間違った情報が拡散されてしまうこともあります。

特に間違って誇張された情報は拡散されやすいです。

今回は医学論文の中でも権威の高い Lancet という論文に掲載された新型コロナウイルス肺炎の特徴をお話しし、現時点での最新情報をお届けしようとお思います。

内容的には先生方に向けたものになりますが、先生以外の方でも読みやすいように可能な限り分かりやすく書きました。

 

  1. コロナウイルスとは
  2. 今回の新型コロナウイルス感染のイベント
  3. 分析方法
  4. 分析の結果41人が新型コロナウイルスに感染していた
  5. 患者データの分析から言えること
  6. 新型コロナウイルスに関して医学論文で明らかになっていること

 

    コロナウイルスとは

    まずはコロナウイルスとはどのようなものか、そこから確認しましょう。

    コロナウイルスとは、コロナウイルス科およびニドウイルス属に属するヒトおよび他の哺乳動物に広く分布するエンベロープを持たない RNA ウイルスを指します。

    ほとんどのコロナウイルス感染は軽症で済むことが多いですが、今までに2種類のコロナウイルス;重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)および中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)の流行により、過去 20年間で 10,000件以上の累積症例が発生したことは記憶に新しいと思います。

    統計的に確認されている死亡率はSARSで10%、MERSで37%と言われています。

    今までに確認されているヒトへ感染するコロナウイルスは実は氷山の一角にすぎず、今回のような新しい人獣共通感染イベントによって新しいウイルスの存在が明らかになることがあるのです。

    今回の新型コロナウイルス感染のイベント

    2019年12月に原因不明の一連の肺炎症例が中国の湖北省武漢で確認されました。臨床症状はウイルス性肺炎に非常に類似しているとの報告でした。

    調査の結果、下部気道検体のディープシーケンス解析により2019年の新型コロナウイルスということがわかりました。専門的には 2019-nCoVと表現されます。ちなみに SARS と MERS はどちらもコウモリに由来すると考えられており、これらの感染はジャコウネコとヒトコブラクダから直接ヒトに感染したことがわかっています。

    2020年1月までに医療従事者を含む 800人以上の感染が武漢で特定され、その後は中国国内の複数の省、タイ、日本、韓国、米国などで確認されています。

    今回は、この新型コロナウイルス感染が確認された患者の疫学的、臨床的特徴、治療経過を分析し、新型コロナウイルス感染の臨床的特徴を見ていきましょう。

    分析方法

    新型コロナウイルスへの感染が疑われるすべての患者は、武漢の指定病院に入院しました。

    リアルタイム RT-PCR および次世代シーケンシングにより、実験室で確認された新型コロナウイルス感染患者のデータを前向きに収集し分析されています。

    研究者は患者またはその家族と直接コミュニケーションを取り、疫学的特徴や症状のデータを分析しました。

    そして集中治療室(ICU)に入院した重症患者と入院しなかった患者の結果についても比較しました。

    分析の結果41人が新型コロナウイルスに感染していた

    2020年1月2日までに、入院した患者41人が、科学的に確認された新型コロナウイルス感染症でありました。

    感染患者のうち30人、73%が男性でした。患者の年齢の中央値は49.0歳(IQR 41・0–58・0)でした。 41人の患者のうち27人(66%)が華南のシーフード市場に暴露されていることが分かりました。

    また41人の患者の中で基礎疾患(もともと病気を持っている人)のある患者は13人、全体の32%でありました。

    基礎疾患の内訳は糖尿病が8人 (20%)、高血圧が6人 (15%)、そして心血管疾患が6人 (15%)でした。

    病気の発症時の一般的な症状は、発熱(41人の患者のうち40人 (98%)、咳が31人 (76%)、筋肉痛または疲労が18人 (44%)でした。

    それほど一般的ではない症状としては、痰が11人 、頭痛が3人、喀血が2人、そして下痢が1人でした。

    呼吸困難は、40人の患者のうち22人(55%)に認められ、感染成立から呼吸困難が出現するまでの期間の中央値は8.0日でした。

    41人の患者のうち26人(63%)がリンパ球減少症を認めました。 41人の患者全員に肺炎があり、胸部CTで異常な所見が認められました。

    合併症は急性呼吸促迫症候群 (ARDS)が12人 (29%)、RNA血症が6人(15%)、急性心臓障害が5人(12%)などが挙げられました。 13人(32%)の患者がICUに入院し、6人(15%)が死亡しました。

    患者データの分析から言えること

    次に新型コロナウイルス感染者41人データを見ていきましょう。

    臨床症状に関してはほとんどの患者が発熱、乾いた咳、呼吸困難、および胸部CTスキャンで両側のすりガラス状陰影がありました。

    新型コロナウイルス感染症のこれらの特徴は、SARS および MERS 感染症にある程度似ています。

    重症患者は ARDS を発症し、ICU 入院と酸素療法が必要になってました。

    入院から ARDS 発症までの期間はの2日と短期間に重症化しています。

    現段階での41人の患者のうち6人(15%)が死亡したため、2019-nCoV の死亡率は高いですが、あくまで41人しか分析されていないので本当の死亡率はまだわからない、と考えるべきです。

    しかし死亡者数は急速に増加しています。

    その後の 2020年1月24日の時点で、835人感染が確認され、25の死亡例がありました。

    中国の他の地域および他国での発症が報告され、現在も拡散中です。

    一部の医療従事者への感染も確認されています。

    新型コロナウイルスが人から人への感染が可能であることが示されています。

    感染者の治療をしている医療施設での病気のさらなる拡散を防ぐために、医療従事者間での発熱や呼吸器症状の発症を密に監視する必要があります。

    喀痰検査は感染が疑われたらすぐに行う必要があります。

    無症候性感染の同定のために、新型コロナウイルスへの暴露の際には医療従事者の間で血清抗体を検査する必要があります。

    今回の新型コロナウイルス感染でICU入室を必要とする患者は、ICU入室を必要としない患者よりも GCSF、IP10、MCP1、MIP1A、およびTNFαの濃度が高く、サイトカインの上昇は疾患の重症度と関連していると考えられます。

    ところが、逆に炎症を抑える Th2サイトカイン(例:IL4およびIL10)の分泌増加も確認されており、これはSARS感染とは異なりました。

    なぜこれらの結果になるのかは、さらなる研究が必要です。

    治療に関しては、コロナウイルス感染に対する抗ウイルス治療は効果的であると証明されていません。

    治療手段としてサイトカイン誘発性肺障害の治療目的にコルチコステロイドの投与が考慮されますが、SARS および MERS 患者の現在のエビデンスは、コルチコステロイドの投与は死亡率に影響を与えず、むしろウイルスクリアランスを遅らせることを示唆しているため、WHOの暫定ガイダンスでは新型コロナウイルスに対するコルチコステロイドはルーチンに全身投与されるべきではありません。

    今回の 41人の患者のうち、低用量のコルチコステロイドは少数の軽症例に投与され、低〜中等用量のコルチコステロイドは重度のARDS患者の約半数に投与されましたが、明らかな効果は証明されていません。

    新型コロナウイルスに関して医学論文で明らかになっていること

    長くなりましたのでまとめます。新型コロナウイルスに関して医学的に明らかになっていることでキモになるところは

    • 下気道の検体から新型コロナウイルスの存在が明らかになった
    • 人から人への感染が確認されている
    • 感染した際の症状や医学的初見はSARSと酷似しているところが多い
    • 感染した人の約3割が基礎疾患(もともと何かの病気)を持っていた
    • 41人の患者のうち15%にあたる6人が死亡したが、正確な死亡率は不明
    • 抗ウイルス治療は立証なく、ステロイド投与も積極的には推奨されない

    といったところです。医学論文として新型コロナウイルスを解明するにはまだまだ研究データが必要で、今後の臨床データや基礎研究データの解析が待たれるところです。

    メディアでは色々な情報が流れていますが、医学的に立証されているのは現時点で上記になると思われます。

    皆さんのご意見をお待ちしております。

    【監修医師】

    1. Dr. KyoJi: 医師11年目の外科医, 新宿の医局→フリーランス, 《Twitter》https://twitter.com/dkyoji
    2. 小山翔平: 整形外科専門医