不妊症・不妊治療の実態とは?【医師監修】

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赤ちゃんは家庭を明るくしてくれます。

赤ちゃんが家族に加わると、家族全員が幸せな気分になることと思います。

そのように、友達や親戚たちから“赤ちゃんができた”と嬉しい報告を受ける反面、不妊で悩む方も多いとわれています。

 

「どうして私は赤ちゃんができないのだろう…」

 

と1人で悩んでしまう方も多いのではないでしょうか?

このように赤ちゃんができないと悩んでいる人の数は増加傾向であり、大きな問題となっているのです。

今回は、そのような“不妊症の原因”“不妊症が増えた背景”についてお話していきます。

デリケートなテーマになりますが、医学的な見地からしっかりとお伝えします。

 

  1. 夫婦の8〜10組に1組が、赤ちゃんができないと悩んでいた
  2. 不妊の原因は男女双方
  3. 不妊治療を受けている人はどのくらい?
  4. 不妊治療の内容
    1. 人工授精
    2. 体外受精
    3. 顕微授精
  5. 不妊治療を受ける人は増えている!
  6. 女性不妊の原因
    1. 晩婚化
    2. 病気
      1. 子宮内膜症
      2. 子宮筋腫
      3. 性感染症
  7. 男性側の不妊の原因
    1. 先天性の男性不妊
    2. 後天性の男性不妊
  8. 造精機能障害
    1. 無精子症
    2. 乏精子症
    3. 精子無力症
  9. 男性不妊に対する治療
  10. まとめ

 

夫婦の8〜10組に1組が、赤ちゃんができないと悩んでいた

WHO・世界保健機関では、

 

1年間以上自然に赤ちゃんができないこと不妊症

 

と定義しています。

日本では、以前は不妊の定義は2年とされてきましたが、海外の多くのグループが1年と定義しているため、平成27年より日本でも不妊症は1年いう定義となりました。

これには統計学的な裏付けがあり、“赤ちゃんが欲しいと思い避妊をせずに性行為をしていると、夫婦の約90%は2年以内に妊娠する”というデータに基づいています。

“夫婦の90%は何の問題もなく妊娠できて赤ちゃんができる”というのは、いっけんすると安心できる数字にも思えますが、逆にいうと“2年たっても妊娠できない夫婦が10人に1人はいる”ということにもなります。

 

この10人に1人という確率は、思いの外高い確率と感じませんか?

結婚されて妊活した時に、“赤ちゃんが欲しいと思っているのになかなかできない”という現実に直面すると、

 

「なぜ私たちだけ赤ちゃんができないんだろう…」

 

と思う夫婦が多いと思いますが、世の中には同じように悩んでいる人たちがたくさんいます。

不妊の問題は決して特別なことではないのです。

不妊の原因は男女双方

ではそんな不妊の原因はどうなのでしょうか?

「WHOによる7273カップルの不妊症の原因調査」によると、

 

  • 女性のみに原因がある: 約40%
  • 男性のみにある: 約24%
  • 男女双方にある: 約24%

 

となっております。

この結果からわかる通り、「不妊は女性の問題」ではなく、「男性・女性双方の問題」であることが分かっているのです。

不妊治療を受けている人はどのくらい?

そんなご夫婦で不妊治療を受けている人はどのくらいいるのでしょうか?

日本で不妊治療を受けている人の数は、推定284,800人と言われています。

この数字は、少し古いデータですが平成10年度厚生労働省が発表した「生殖補助医療技術に対する医師及び国民の意識に関する研究」において推計された患者数から導き出されています。

その後も不妊治療の数は増加しているといわれていますので、現在は 30万人はこえているものと予想できます。


さらに不妊治療の内容では、次のような数字も出ています。

 

  • 人工授精(じんこうじゅせい):約36,000人
  • 体外受精(たいがいじゅせい):約32,000人
  • 顕微授精(けんびじゅせい):約16,000人

 

不妊治療にはこの3つの治療の前段階として、女性の排卵日生理周期体温から推測し、排卵日に性行為を促すことで妊娠を目指すタイミング療法などがありますが、積極的に医療介入を行うのはこの3種類の治療が有名です。

一般の方にはこの3種類も区別がつきづらいと思いますので簡単に説明します。

不妊治療の内容

人工授精

人工授精とは男性から摂取した精子スポイトのような器械(きかい)で子宮内部に注入する治療で、受精は子宮内で行われます。

体外受精

体外受精男性から精子を、女性からは卵子を採取し、人工的に卵子に精子をふりかけることによって受精させ、その受精卵を子宮に移植するという方法です。

顕微授精

顕微授精ですが、体外受精と同様に男性から精子を、女性からは卵子を採取しますが、卵子に精子をふりかけるのではなく、顕微鏡をのぞきながら生きのいい精子を採取し、さらに顕微鏡をのぞきながら卵子にその精子をとても小さなスポイトで注入することで受精させ、その受精卵を子宮に移植するという治療方法です。

 

現在はこのような積極的な不妊治療をできる病院・クリニックはさらに増えているので、不妊治療の件数もっと増加していると言われています。

不妊治療を受ける人は増えている!

近年の不妊治療の進歩は目をみはるものがあり、昔だったらあきらめなければならなかった夫婦でも妊娠のチャンスが得られるようになってきました。

そのため不妊専門病院クリニックも増え、数多くの患者さんが治療に通っています。

医療現場でも不妊に悩む人たちが増えているという実感があります。

ここからは現代の夫婦がなぜ“不妊になりやすいのか?“という不妊の原因についてお話ししていきます。

女性不妊の原因

晩婚化

1つ目は女性の晩婚化です。

女性の社会進出が進むという光がある中で、若い20代の時間を仕事に捧げてしまったりする女性も増えた影響で、30代になってから妊娠を望む人が増えてきていることが不妊の原因の1つとして考えられています。

昔に比べ女性のキャリア形成をする環境が整ってきたからこそ、結婚時期が先延ばしになり、それにあわせて妊娠時期も遅くなってしまっている女性が増えています。

この晩婚化不妊の原因になっているとの指摘もあり、また後ほど述べるように不妊の原因になる病気にかかってしまうリスクも高くなってしまうのです。

 

こちらはあくまでただの事実として、人間という生物の実情をお伝えします。

女性の社会進出を否定する意味合いは一切ありません。

医療が進んでいるといわれている日本でも、栄養状態や衛生環境があまり整っていないたった100年ほど前までは人生50年といわれたこともあります。

その時代には15歳で結婚し、20歳には出産し、30歳には子育てもひと段落つき、50歳を迎えてお亡くなりになる、というのが当たり前だったのです。

これが生物(せいぶつ)としての人間の現実なのです。

 

いくら栄養状態が改善し、衛生環境も整い医療が進歩しても、残念ながら人間が進化しているわけではありません

このように、もともと人間が 20歳前後で出産するような生物(いきもの)として進化してきているとことを考えると、30代・40代で妊娠し出産するということがどれだけ大変なことなのかイメージできるかと思います。

 

繰り返しですが、この事実をお伝えしたからといって女性の社会進出について批判しているわけではありません。

客観的な生物(せいぶつ)としての人間の事実をお伝えさせていただきました。

病気

次に不妊の原因となるご病気について説明します。

代表例として子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)などという病気があげられます。

また性感染症(せいかんせんしょう)も不妊の原因となる大事なご病気です。

子宮内膜症

まず、子宮内膜症についてお話します。

そもそも子宮内膜(しきゅうないまく)は、言葉のとおり子宮の中にある膜状の組織です。

子宮内膜症はこの子宮内膜に似た組織が子宮以外の場所に増えたり、悪化したりする病気です。

子宮内膜症は不妊の原因とされ、排卵障害(はいらんしょうがい)卵子のピックアップ障害受精障害受精卵の輸送障害着床障害(ちゃくしょうしょうがい)など妊娠の各ターニングポイントで様々な問題を引き起こします。

子宮筋腫

また、子宮筋腫も子宮内膜症と同様に不妊の原因に関係します。

子宮筋腫は子宮を形作る筋肉の中に「筋腫(きんしゅ)といわれる筋肉のコブができる病気です。

そのコブにより子宮の中がでこぼこになることで卵子の着床(ちゃくしょう)や赤ちゃんの発育に大きな影響が出てしまい、不妊となる病気です。

近年はこれらの疾患にかかる女性が多く、不妊の原因と指摘されています。

性感染症

さらに、性感染症が増えてきていることも不妊の原因といわれています。

性感染症は男女ともに発生するものが多く、平成28年厚生労働省が発表した「性感染症の発生動向と対策の現状」では、年間報告数は性器クラミジア総数 24,000件以上報告されています。

その他の性器ヘルペス淋菌(りんきん)尖圭(せんけい)コンジローマの感染症も5,000件を越える報告数があり、性感染症の増加は見過ごされる問題ではなくなっているのです。

 

では性感染症と不妊とはどのような関係があるのでしょうか?

実は性感染症によって卵管(らんかん)や子宮頚管(しきゅうけいかん)などで炎症が生じることで不妊につながることが判明しています。

そのため性感染症が判明した方はすぐに治療を行い、自分のみならずパートナーにもお知らせし、一緒に治療をしていくことが求められるのです。

男性側の不妊の原因

それでは次に、男性側の不妊の原因について考えていきましょう。

男性不妊には先天性後天性のものがあります。

先天性の男性不妊

先天性の男性不妊の原因は、様々な遺伝的要因発育段階で受けた影響等で、性機能不全(せいきのうふぜん)になるものです。

性機能不全とは性的欲求や性的興奮とその最高潮などが減退・欠如する状態をいい、

 

  • 勃起障害(ぼっきしょうがい)
  • 早漏(そうろう)
  • 遅漏(ちろう)
  • オーガズム障害

 

などがあります。

後天性の男性不妊

一方で後天性の男性不妊の原因は、

 

  • ストレス
  • アルコール
  • 喫煙
  • 肥満
  • 糖尿病
  • 病気や薬の影響
  • 精巣の損傷もしくは機能障害
  • 精子の産出あるいは射精に関するトラブル

 

など様々なものが考えられます。

これらの影響で、性行為を行っても女性の膣内に射精できなかったり、射精できてもうまく精子が働かないため、不妊となってしまうのです。

造精機能障害

これらの男性不妊の中でも、造精機能障害(ぞうせいきのうしょうがい)という障害がもっとも多く、男性不妊の原因の約90%を占めます。

増精機能障害では精子をつくり出す機能自体に問題があり、精子をうまくつくれない状態です。

”精巣”や”内分泌系(ないぶんぴけい)といわれるホルモンの分泌”に異常にある場合に生じる障害です。

 

ちなみに、一度の射精で放出される精子の数数億個とされております。

そのうち、子宮に到達する前99%が死滅し、子宮にたどり着くころには数十万個以下となり、さらに卵子の周囲まで到達できるのは数百個以下とされています。

そのため最初の精子の数が少なかったり、運動能力に乏しい精子が多い場合は卵子に到達する精子の数が減り、妊娠できない原因となります。

 

そんな造精機能障害には以下のような種類があります。

無精子症

無精子症(むせいししょう)は造精機能障害の中でも重い症状です。

精液中に精子が一匹もいない状態ですが、精巣や精巣上体(せいそうじょうたい)に精子が存在していれば顕微授精などの不妊治療で受精・妊娠することが出来ます。

乏精子症

乏精子症(ぼうせいししょう)は精液の中に精子はおりますが、その数が少ないという状態です。

精子の数が基準を少し下回る程度の軽症であればタイミング療法などを行います。

さらに精子の数が少なく重症の場合、人工授精体外受精顕微授精等の不妊治療を行います。

精子無力症

精子無力症(せいしむりょくしょう)は精子の数は正常にあるけれど、製造された精子の運動率が悪い症状です。

その運動性の悪い精子の状態により自然には卵子まで泳いでいくことができないため、人工授精顕微授精などの不妊治療を行ないます。

 

そのほかにも男性特有の疾患による男性不妊は数多く知られています。

男性不妊に対する治療

そんな男性不妊に対する治療として最も優れているのが顕微授精です。

精子の数についていえば、自然に妊娠するにはやはりある程度の数が必要です。

ただ、数と受精率が比例するかというと、そうではありません。

 

実は精液の検査は、不安定不正確なものと言われています。

WHOでも一般的な精子1ml当たり2000万個以上運動精子率50%という数値を出していますが、但し書きで“これを正常値としないように!”と断り書きをつけています。

 

現代の医学では、顕微授精によって無精子症の人でも、手術で睾丸(こうがん)を切ってみて精子を1匹でも取ることができれば受精卵を得ることが可能です。

男性不妊の原因の一つ、遺伝子病クラインフェルター症候群の人でも丹念に精巣の中の精細管(せいさいかん)を探すと精子が見つかることがあり、そこに1匹の精子さえ見つかれば妊娠が叶う(かなう)のです。

実際にそのクラインフェルター症候群の方の出産例も報告されています。

 

顕微授精は、男性不妊にとっても大きな福音となっている医学の賜物です。

10年前なら不可能だった問題も、ある程度クリアできるのが今の時代の医学なのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は不妊の原因とその種類現代の治療法について幅広くお知らせしました。

この記事が不妊になやまれている方々の参考になればうれしいです。

 

また、日本政府の意向で、不妊治療が保険適用される流れとなっております。

正式な決定までは補助金も出るようです。

もし不妊でお悩みの方がいらっしゃりましたら、一度御近くの産婦人科の先生にご相談ください。

 

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【参考文献】

  1. WHO(世界保健機関)による7273カップルの不妊症の原因調査
  2. 公立社団法人 日本産婦人科学会ウェブサイト
  3. 生殖補助医療技術に対する医師及び国民の意識に関する研究

【監修医師】

  1. Dr. KyoJi: 医師11年目の外科医, 新宿の医局→フリーランス, 《Twitter》https://twitter.com/dkyoji
  2. 小山翔平: 整形外科専門医