【人体実験】自分の体に内視鏡を挿れた医師

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「人体実験」

 

皆さんはこの言葉を聞いてどんなイメージを思い浮かべますか?

ナチスの人体実験や、SF映画などで取り上げられるようなとても恐ろしいものを想像される方も多いのではないでしょうか?

日本では、旧日本軍 731部隊と呼ばれるグループによって行われた実験が有名です。

またアメリカでは、“罪人に人体実験が行われている…!”というようなまことしやかなウワサが流されています。

今回はそんな嫌なイメージのある人体実験の常識を変えるような、自分の体を使った面白い研究結果を紹介します。

 

  1. 日本人医師による真面目な人体実験
  2. 「ノーベル賞」を受賞した人体実験
  3. まとめ

 

日本人医師による真面目な人体実験

これはとある日本人の研究です。

その方は、自分の体を使って「座ったままの姿勢で行う大腸の内視鏡検査」という画期的な方法を編み出しました。

簡単に言えば、自分で自分の肛門に内視鏡を突っ込んで、自分の大腸を観察する”という、身を挺した人体実験を行い、その方法を確立したのです。

そしてこの研究は、なんとあのイグノーベル賞医療教育賞を受賞したのです。

 

改めてご紹介しましょう。

この画期的な人体実験によりイグノーベル賞を受賞したのは長野県昭和伊南総合病院消化器病センター長堀内朗(ほりうち あきら)先生でした。

堀内先生の研究は、正確には「座位での大腸内視鏡検査-セルフ大腸内視鏡検査から学んだ教訓」と言うタイトルでした。

セルフ大腸内視鏡検査

では詳細についてみていきましょう。

堀内先生は右手で内視鏡の先端を持ち、自分の肛門から大腸に挿入後、モニターを見ながら左手で内視鏡のコントローラーを操作するという方法を確立しました。

これが“セルフ大腸内視鏡検査”です。

 

言葉にすれば簡単ですが、大腸内視鏡検査はかなりの苦痛を伴います。

胃カメラよりもつらいとされ、病院によっては簡単な麻酔をしながら検査をすることもあるくらいです。

そんな苦痛を我慢しながら、自分の肛門から入っている内視鏡を操作するという行為は、並大抵の精神力では行えません。

そんな苦痛とは相反するように、自分の肛門にいれた内視鏡を自分で操作するという「見た目の滑稽さ」がイグノーベル賞受賞の決め手になったようです。

 

イグノーベル賞真面目な研究ではありますが、面白みのある研究・滑稽な研究に送られる賞です。

その受傷基準を見事クリアした、日本が誇る人体実験となったのです!

 

この賞についてはさらに面白いエピソードがあります。

アメリカハーバード大学で行われた授賞式のスピーチで、堀内先生がこの研究結果を実演してみせようとしたのですが、その光景があまりにも刺激的なため強制ストップとなってしまったのです(笑)

アメリカですら受け止めきれない絵面となってしまったのですね!

 

しかし、イグノーベル賞だけに研究の面白さだけに目が行きがちですが、実は研究の目的は至って真面目であり、そして考えさせられるものです。  

今の医学をもってしても、多くの人がなどに生じる腫瘍潰瘍などの病気で苦しんだり亡くなったりしています。

内視鏡検査はそのような病気を確実に発見し、診断するためにとても重要な技術です。

胃を調べる「胃カメラ」は、通常、のどや鼻から内視鏡を入れますが、大腸の内視鏡検査では肛門から内視鏡を入れます。

そのため検査を受ける患者様によっては、痛かったり恥ずかしかったりと、検査を敬遠しがちとなってしまいます。

そうして内視鏡検査を敬遠し続けた結果、病気が進んで手遅れになることも少なくありません。

したがって、少しでも負担の少ない内視鏡検査技術を開発することは、たくさんの人を救うことにつながります。 

堀内先生のこの“セルフ大腸内視鏡検査”にはそのような思いが詰まっていたのです。

この精神的な負担の少ない新しい内視鏡技術を、自らの身体を実験台にして見つけた」というのが本当の功績なのです。 

堀内先生は、

 

「より多くの人が内視鏡検査を受けて、ポリープの段階で対処すれば、大腸がんで亡くなる人はずっと減るはず」

 

だと語っています。

苦痛を伴う検査を少しでも受けやすいものにするために、自分で試してみたという発想が今回の受賞につながりました。

これはあくまで精神的な苦痛に焦点を当てられておりますが、「自分で自分の身体に器具を入れて検査する」ということに精神的苦痛を感じる人もいるのは間違いありませんし、肉体的な苦痛にはまだまだ改善の余地があります。

この研究が大腸内視鏡検査の苦痛を緩和する扉をこじ開けてくれましたので、今後さらに負担の少ない検査技術が開発されることを期待します。

「ノーベル賞」を受賞した人体実験

参考までに、堀内先生ととてもよく似た研究内容で本家の「ノーベル賞」を受賞した人物がいます。

その名はヴェルナー・フォルスマンドイツの医師です。

1929年の晩冬のドイツで、国家試験に合格したばかりの研修医ヴェルナー・フォルスマンは、自分のアイデアを実行したい衝動を抑えきれずにいました。

「チューブを馬の血管から心臓に挿入し、血圧を測った」という記録を医学書で見つけた彼は、「もしチューブを人間の血管から心臓に挿入できれば、強心剤を直接心臓に注入して、より有効な治療ができるはずだ」と考えたのです。

「これを生きた人間で試してみたい…」と彼はずっと思っていました。



ある日、手術室で彼の実験は決行されました。

彼は自分の腕の静脈にゴム製のチューブ(尿管カテーテル) を差し、もう片方の手でチューブを心臓へと押し進めていったのです。

そして、腕からチューブをぶら下げたまま階段を降り、地下にある放射線室でレントゲン写真を撮影しました。

そしたらなんと、チューブの先端は確かに心臓内部にまで到達していたのです。

 

当時、体を張った彼の実験に周囲は批判を浴びせました

教授からは「まるでサーカスの見世物だ!」と罵倒され、失意のうちに研究室から追放された彼は、大学を去り町の開業医としての生活に入ったのです。

 

それから27年後の1956年フォルスマンはノーベル賞授与式の会場にいたのです。

アメリカの二人の研究者が心臓カテーテルを使い、彼の実験の正当性を証明したのでした。

彼は心臓カテーテル法の先駆者として、二人の研究者とともにノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

 

自らの身体を使って「体内に管を通す実験」を行ったという点では堀内先生の業績と本当にそっくりです。

イグノーベル賞はノーベル賞のパロディといわれますが、2つの賞差は案外紙一重なのかもしれません。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は自分の体を使って実験をすることで、後世の医学の発展に影響を与えるかもしれない!?という人体実験の話をしました。

今回紹介したのは、あくまで自分の身体を使って行っている人体実験であり、他人の身体を使って怖い実験をしているものではありません。

もしかすると、今日も世界のどこかではこわーい人体実験をしているかもしれませんが、堀内先生やフォルスマンと同様に自分の身体を使って未来を切り開く実験をしている人もいるかもしれません。

これからの医学の発展にご期待くださいね!

 

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【参考文献】

  1. Forssmann W: Die Sondierung des recheten Herzens, Klin Wscft, 45, 2085-7, 1929
  2. 座位での大腸内視鏡検査-セルフ大腸内視鏡検査から学んだ教訓 堀内朗, 2006

【監修医師】

  1. Dr. KyoJi: 医師11年目の外科医, 新宿の医局→フリーランス, 《Twitter》https://twitter.com/dkyoji
  2. 小山翔平 (Shohei Oyama): 整形外科専門医, おやま整形外科クリニック院長 《Web》https://oyama-seikei.gassankai.com/