外科医の誕生日に手術をすると〇〇率が高くなる!?

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外科医の誕生日に手術を受けた患者は、それ以外の日に手術を受けた患者より術後の死亡率が約2割高い…。

そんな研究結果を日本の慶応大アメリカのカリフォルニア大ロサンゼルス校などのチームが米国の医療データを分析して発表しました。

今回はそんなちょっと怖いけど、興味のある論文について御説明します。

 

  1. 外科医/手術の現状
  2. 手術パフォーマンスについての研究
  3. 研究結果
  4. まとめ

 

外科医/手術の現状

外科医の手術のパフォーマンスは常に一定ではありません。

医師も人間ですから、体調や精神状態などに影響を受けて手術の結果にぶれが生じることがあり得るのです。

以前、ある研究では

 

  • 全体の20~30%の患者が手術後に合併症を経験
  • 5~10%の患者が手術後に死亡

 

すると報告されたこともありました。

 そして、

 

  • 報告された合併症のうち 40~60%
  • 報告された死亡のうち 20~40%

 

防ぐことができた可能性のあるものであったとの研究結果も報告されています

 合併症が起きる原因は様々ですが、その中でも「外科医の注意をそらすような要素が外科医のパフォーマンスを引き下げる影響があるのでは?」と考えられています。

手術パフォーマンスについての研究

そこで今回、日本の慶応大アメリカのカリフォルニア大ロサンゼルス校などのチームが米国の医療データを分析しました。

この研究グループは「誕生日に外科医が手術をすると、仕事後のパーティなどのために”いつもより注意散漫になること”や”手術をより早く終えようと急ぐこと”が原因で手術のパフォーマンスが変わるのではないか?」という仮説を立てデータの分析に入ったとのことです。

 ここでは、

 

  • 患者の年齢
  • 性別
  • 人種
  • 併存疾患
  • 予測死亡率

 

などに関して、外科医の誕生日に手術を受けた患者誕生日以外の日に手術を受けた患者を比較しました。

研究結果

2011 年から 2014 年47,489人の外科医によって行われた 980,876 件 の緊急手術を分析し、年齢・性別・人種・併存疾患・予測死亡率など、術前の状況については”誕生日に手術を受けた患者”と”誕生日以外の日に手術を受けた患者”に差が出ないことを確認しております。

その上で、術後の患者の死亡率を比較したところ、”外科医の誕生日に手術を受けた患者の死亡率”は”誕生日以外の日に手術を受けた患者の死亡率”よりもなんと1.3%増加していました

これは、年齢・性別・人種・死亡率が高いと予想される状態など手術の結果に影響しそうな条件の中で、”外科医の誕生日のみ”が外科医のパフォーマンスに影響を与えていることが示されています。

つまり「手術が成功するかどうか」、「手術の後に合併症が起きたり、患者が亡くなるかどうか」は外科医の誕生日が関係している可能性が高いことが考えられます。

その差は 1.3% の範囲ではありますが、万が一、”手術後に大事な家族が亡くなってしまい、その手術日が執刀を担当した外科医の誕生日だった”と判明したら嫌な気分になりますね…

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回の研究結果により、

 

  • 外科医のパフォーマンスは一定ではない
  • 特に誕生日には手技のパフォーマンスが下がる可能性がある

 

ということが示されました。

大規模な医療データを統計的に解析し、今まで証明されていなかった誕生日と手術のパフォーマンスの関係を検証することができたのです。

この論文から得ることのできる今後の教訓として、医師のパフォーマンスが低下してしまう要因・イベントをあらかじめ特定することで、その対策を立案しパフォーマンスの低下を防ぐことが期待されます。

今回のデータに関してより具体的に言えば、「外科医の誕生日は手術を控えさせる」という方法により、可能な限り患者様へのリスクを減らすことができると考えられます。

今回は「外科医の誕生日と手術のパフォーマンス」の相関関係についての解析でしたが、今後これ以外の要素にも応用ができるかもしれません。

(あくまで一例ですが、「内科医の妻の誕生日と内視鏡の成功率」「整形外科医の子供の生まれた日と手術後の患者さんの歩行状態」など。)

 

今回の記事は以上となります。

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【参考文献】

  1. Kato H, Jena AB, Tsugawa Y. Patient mortality after surgery on the surgeon’s birthday: observational study. bmj. 2020 Dec 10;371.
  2. Shrime MG, Bickler SW, Alkire BC, Mock C. Global burden of surgical disease: an estimation from the provider perspective. Lancet Glob Health 2015;3(Suppl 2):S8-9.
  3. Healey MA, Shackford SR, Osler TM, Rogers FB, Burns E. Complications in surgical patients. Arch Surg 2002;137:611-7, discussion 617-8.

【監修医師】

  1. Dr. KyoJi: 医師11年目の外科医, 新宿の医局→フリーランス, 《Twitter》https://twitter.com/dkyoji
  2. 小山翔平 (Shohei Oyama): 整形外科専門医, おやま整形外科クリニック院長 《Web》https://oyama-seikei.gassankai.com/