【驚愕】バイオリン演奏しながら手術を受けた女性の話【意識あり】

Medivery


現代の医学においては、世にも奇妙な手術がいくつも存在します。

その中でも脳神経外科の先生は、とても神秘的で革新的な手術をすることがあります。

 

今回は、そんな脳神経外科の先生が行った、脳の中にできたガンを摘出するための特殊な方法についてご紹介します。

患者さまが意識を保ち、バイオリンを引きながら脳のガンを取り除いたという驚愕の手術です。

 

  1. プロバイオリニストに起きた悲劇
  2. バイオリンを続けるために…
  3. 手術の結果
  4. 覚醒下脳腫瘍摘出術
  5. まとめ

 

プロバイオリニストに起きた悲劇

イギリスイングランド南部ワイト島交響楽団に所属するトップレベルのプロバイオリニストダグマー・ターナーさん(53歳)は、2013年にコンサート中に痙攣発作を起こしました。

病院に搬送された彼女は、ゆっくりと大きく進行するタイプの脳腫瘍にかかっていることを告げられました。

ターナーさんは放射線治療を導入し治療を続けてきましたが、検査の結果、腫瘍は縮小せず、悪化し続けてしまったのです。

バイオリンを続けるために…

2019年11月に医師と検討を重ねた結果、脳腫瘍摘出手術をすることを決意したのです

しかし、ターナーさんにとって一番心配だったのはバイオリンです。

脳腫瘍を取ることと引き換えに、正常な脳まで傷つけてしまい手に障害が出る可能性があったのです。

10歳の頃にバイオリンを始めて以来、生き甲斐になっているバイオリンの演奏を取られてしまうことは何よりも悲しいことでした。

そこで、サウスロンドンにあるキングス大学病院 脳神経外科医キヨマーズ・アシュカン氏は彼女の右前頭葉にあるバイオリンを弾くために重要な機能を守る手術計画を立てました。

彼女の脳腫瘍は、バイオリンピッチ音色を調整する左手の微細な動きを司る脳の領域のすぐ近くにあります。

腫瘍を摘出している間に、その大事な左手の機能を傷つけるリスクがあったのです。

そこでメディカルチームが提案したのは、「手術の途中で麻酔を調整してターナーさんの目を覚まさせ、左手の機能が影響を受けていないか確認するためにバイオリンを演奏してもらいがなら脳腫瘍を摘出する」というものでした。

 

執刀医である Dr. アシュカンはこういいます。

「私たちは年間400件もの腫瘍切除手術を行います。中には患者の言語機能テストをするために手術中に覚醒してもらうこともあります。しかし手術中に楽器を演奏するのは初めての経験です。」

手術の結果

そして、結果的に手術は成功し、ターナーさんは無事バイオリンがひける状態のまま回復していったのです。

Dr. アシュカンによると

「私たちは全体の90%の腫瘍を重大な神経症状を残すことなく切除することができました。彼女の左手の機能は全く問題ありません。」

と述べています。

ターナーさんは

「演奏ができなくなることを考えると胸が張り裂けそうでした。」

「ドクターアシュカン、そしてキング病院の脳神経外科チームは素晴らしい手術計画をたててくださいました、脳機能のマッピングから、私が演奏できるようにするための腫瘍摘出の位置決めまで、すべて最高の計画です。」

術後にそう語り、手術の3日後には無事退院することができたとのことです。

覚醒下脳腫瘍摘出術

脳の機能の中でも話すこと体の動きに関係する微妙な位置の手術を行う際、患者の意識を覚醒したまま執刀するこの手法覚醒下脳腫瘍摘出術(かくせいかのうしゅようてきしゅつじゅつ)と呼び、現在は世界中の病院で行われています。

覚醒下脳腫瘍摘出術とは、脳機能を温存しながら脳腫瘍を可能な限り摘出することを目的とした手術方法です。

手術中に麻酔から覚醒させ、患者さんの喋り具合手足の動きを実際に確認しながら腫瘍摘出を進めることで、患者さんの機能温存を図ります。

 

脳は領域によって担う機能が異なり、これを脳の機能局在といいます。

主な領域として、

 

  • 手足を動かす一次運動野
  • 体の感覚を認識する一次感覚野
  • 言葉をしゃべるための運動性言語野
  • 聞いた言葉を理解するための感覚性言語野

 

などがあります。

これらの領域は、人類共通で大まかな場所が決まっており、教科書や解剖図などでは綺麗に局在が区別されたりしていますが、実際の局在の境界は個人差が非常に大きいです。

特に、言葉を喋るための言語野個人差が大きいとされていますし、利き腕によっても脳機能の領域が異なっていたりします

 

手術中に全身麻酔で意識がなくなってしまうと、これらの機能が手術で障害されているのかどうか分からないという問題が生じます。

運動機能感覚機能は、電気刺激を用いたモニタリング方法というものがあり、精度が 100% とまではいきませんがある程度機能の障害を推測することができます。

しかし、言語機能に関してはそのようなモニタリング方法がなく、もちろん全身麻酔中の患者さんは喋ることがないので、機能が障害されていないかを確認する方法がありません。

そこで、覚醒下脳腫瘍摘出術では脳腫瘍の摘出中に目が覚めた状態で会話や手足の運動などを行っていただき、これらの機能が保たれていることを確認しながら腫瘍を摘出します。

 

ターナーさんもこの覚醒下脳腫瘍摘出術を受け、バイオリンを弾くための脳機能を温存しながら脳腫瘍を最大限摘出することに成功しています。

本当に素晴らしい手術ですね。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回ご紹介したバイオリン以外に、

 

南アフリカで執刀された、ジャズミュージシャン脳腫瘍摘出手術中にギターを弾いた症例

フランスで執刀された、歌手の女性が咽頭癌摘出手術中に歌を歌った症例

 

なども報告されています。

今回は世にも奇妙な手術の一つ、覚醒下脳腫瘍摘出術についてお話しました。

日々医学は進歩し、このような革新的な手術方法が編み出されています。

今後もアッと驚くような治療方法が出てきたら、ご紹介させていただきますね!

 

このブログでは様々な医学情報をお伝えし、みなさんの医学学知識を増やすお手伝いをしています。

この記事がためになったなぁ!と思った方は、ブックマークをしていただけると大変嬉しいです!

また

 

「こんな内容を調べてほしい!」

「この病気について知りたい!」

 

というというリクエストがある方はコメント欄にご連絡いただけますと、とてもうれしいです!

ありがとうござました!

【参考文献】

  • Watch a Violinist Play While Surgeons Remove Tumour From Her Brain
  • Youtube動画:https://www.youtube.com/watch?v=dAmLQfwhjq0&feature=youtu.be
  • 最新の覚醒下脳神経外科手術 -リハビリテーション科と脳神経外科のコラボレーション-

【監修医師】

  1. Dr. KyoJi: 医師11年目の外科医, 新宿の医局→フリーランス, 《Twitter》https://twitter.com/dkyoji
  2. 小山翔平 (Shohei Oyama): 整形外科専門医, おやま整形外科クリニック院長 《Web》https://oyama-seikei.gassankai.com/