【驚愕】実は脳は自分の手を正しく認識していなかった!?

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皆さんはご自分の手を見たとき、「自分の手だ!」と正しく認識していますよね?

この時点で「どういうこと?」と思う方がほとんどだと思います。

それはその通りで、たいていの場合は普通に自分の手をみたら「自分の手だなぁ」と認識できるのが私たちの脳のなのです。

しかし、最近発表された論文で、「毎日当たり前のように見ている自分の手を、脳は必ずしも正確に認識できていないのかもしれない!?という事実が浮かび上がってきたのです。

今回は、その「脳が自分の手を正しく認識していなかった事実」に関する論文をお伝えし、脳がどのようにして体を認識しているのかを解き明かしていきましょう。

 

  1. 身体を自分で動かしたとき/他人に動かされたとき
  2. 脳から体への伝達経路
  3. ペンフィールドの体性感覚野の地図
  4. 手の自己認識に関する実験
  5. まとめ

 

身体を自分で動かしたとき/他人に動かされたとき

私たちは、自分の手を誰かに動かされたときどういう風に動いたか」を簡単に察知することができます。

一方で、自分の意思で手を動かすようなときには、よほど意識を集中しないと「自分の手がどう動いたのか」を察知することができません

例えば、背中がかゆくなった時を想像してみてください。

私たちは背中に手を回して背中をかこうとするはずです。

この仕草はもはや無意識のうちに行われることがほとんどだとおもいます。

意識を集中して、「肩甲骨の内側 3cm のところを狙ってかきむしろう…!」という風に背中をかく人はまれだと思います。

このように体を動かす動作が無意識に行われれば行われるほど、自分が腕を背中に回して背中をかいたことを認識できないのは、想像しやすいのではないでしょうか?

この例から想像していただきたいのですが、手や足などの末梢部位自分で動かした時誰かに動かされた時とでは、不思議なことに感じ方が異なるのが私たちの身体なのです。

これは、人間の脳が機能する部分が異なるからです。

脳から体への伝達経路

ではまず自分の意思で手足を動かす時のことを考えます。

その際、大脳皮質(だいのうひしつ)の運動野(うんどうや)から筋肉を動かす命令信号筋肉に伝わり筋肉を収縮させます。

そして、手足にある様々な感覚受容器(かんかくじゅようき)が動きに応答し、その情報が脳皮質の一次体性感覚野(いちじたいせいかんかくや)に伝えられます。

次に、他人に手を動かされた時はどうでしょうか?

実はこの場合は動かされた手から一次体性感覚野に感覚情報が伝わるだけになります。

このことからわかるように、この2パターンでは脳が機能する経路が異なるため、その感覚情報が2パターンごとに修正されます

そして脳が刺激される部位や強度にも違いが出るため感じ方の違いが現れると言われています。

ペンフィールドの体性感覚野の地図

また更に興味深いことに、“体の各部位の実際の大きさ”“その刺激に対応する脳の領域の大きさ”にはギャップがあるようです。

この図を見てください。

これは「ペンフィールドの体性感覚野の地図」と言われる絵です。

【ペンフィールドの体性感覚野の地図】

脳神経外科医であるペンフィールドは、てんかん患者の手術の際に切開した脳に電極を当て、脳のあらゆる部位に刺激を与えた際の患者の反応を観察しました。

そして運動野(うんどうや)や体性感覚野体の各部位との対応関係をまとめたものがこの図です。

大脳皮質上の身体部位の図の大きさその部位を司る大脳皮質の面積に一致しています。

この図を見ると、たとえば手・唇・舌から情報を受け取る脳の領域はかなり広くなっています。

これは、手・唇・舌を使った際に脳で処理される情報が、足や体幹などからの情報よりも詳細に処理しなければならない分、その処理に必要な脳の領域が足や体幹よりも多めに必要であることを意味しております。

このように、脳が認識している人体の感覚像現実の人体とは違って歪んでいることがわかっています。

手の自己認識に関する実験

それでは、「ペンフィールドの体性感覚野の地図」で大きな面積を占めていることからもわかるように、脳が詳しい情報を処理しているとされるについて、人間はどれだけ正確に自分の手を認識しているのでしょうか?

今回の実験では、さまざまなサイズに加工した自分の手の写真を見てもらうことで、被験者が脳内で手の大きさをどのように認識しているのかを調べています。

【実験結果】

実験の結果はこの表のようになっています。

手の甲手のひらよりも長さの認識が不正確で、実際よりも長く認識される傾向にあることが示されました。

手の向きによる違いも調べられましたが、向きによる長さの認識については有意な差は見られませんでした。

また、男性と女性で手のサイズの認識が違うということもありませんでした。

この論文の結果から、手のひらの長さが手の甲よりも正確に認識できる理由は、繊細な感覚受容器が集まる手のひらをより正しく認識することが人間生活において重要だからであろう、と論文の著者らは結論づけていました。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

この研究からわかる通り、我々の脳は全てにおいて完璧ではなく、しばしば自分の体を正確に認識してはいないようです。

そもそも私たち人間は、脳という神秘の塊である臓器についてまだまだ解明できておりません。

今回の認識のゆがみについても、解明された現象のほんの一部です。

昨今、“AI が人間を凌駕する”というシンギュラリティについてささやかれていますが、確かに AI の記憶力演算能力に関しては人間の脳を凌駕してしまうでしょう。

しかし、

 

  • 物事を認識する
  • 物事を考える
  • 物事を作り出す

 

ということに関しては、まだまだ人間を凌駕することはできないはずです。

なぜなら AI を作る私たち人間が、自分たちの脳のことをまだまだ理解しきれていないのですから。

その謎多き脳の神秘を解明するために、医師をはじめとした多くの研究者が日々研究を重ねています。

その研究成果の塊である論文の中で、また新たに面白い論文が出てまいりましたら皆さんにお届けしようと思います。

 

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【参考文献】

  1. Umeda, Tatsuya, Tadashi Isa, and Yukio Nishimura. "The somatosensory cortex receives information about motor output." Science advances 5, no. 7 (2019): eaaw5388.
  2. D’Amour S, Harris LR (2020) The perceived size of the implicit representation of the dorsum and palm of the hand. PLoS ONE 15(3): e0230624.

【監修医師】

  1. Dr. KyoJi: 医師11年目の外科医, 新宿の医局→フリーランス, 《Twitter》https://twitter.com/dkyoji
  2. 小山翔平: 整形外科専門医