あなたの腎臓はいくつある?【トリプルキドニー】

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皆さんは自分の内臓についてどこまでご存知ですか?

 

顔や手足と違って内臓はみることができません。

かの太閤殿下・豊臣秀吉の逸話のように、指が6本あったという人ならば外見上すぐに気付くことができますが、内臓についてはよほど病院で検査をしない限り把握するこができません。

 

一方、体の中には心臓や脳のように一つしかない臓器もあれば、肺や腎臓、精巣・卵巣のように体の左右に1つずつ・合計2つ存在している臓器もあります。

この内臓も、特定の割合で”数や位置が異なる人がいる”ということが知られています。

今回はそんな内臓の中で、腎臓に異変が生じた患者さまのお話しです。

 

  1. 3つの腎臓を持つ男性
  2. 腎臓とは?
  3. 腎臓が3つある理由
  4. トリプルキドニー
  5. まとめ

 

3つの腎臓を持つ男性

The New England Journal of Medicine (ザニューイングランドジャーナルオブメディスン) に2020年に掲載された症例報告によりますと、ブラジル38才の男性は、腰の痛みブラジル・サンパウロの病院を訪れたそうです。

その腰痛を検査するために CTスキャンを取ったところ、腰の痛みの原因はギックリ腰と診断されましたが、その CT スキャンにあるべきはずのない臓器が発見されてしまったのです。

それはなんと、3つ目の腎臓です。

腎臓とは?

腎臓は、血液の不純物を濾過して、体内で不要になった水分や物質を尿として排出する臓器です。

尿をつくる以外にも、体調を調節するうえで必要なホルモンを分泌したり、骨を健康に保つ役割を担うなど、人間が生きる上で必要な仕事をいくつも担っています。

大きさは握りこぶしほど約150g程度の重さです。

そらまめのような形をし、背中側骨盤の少し上左右1個ずつあります。

腎臓のイメージ

【腎臓のイメージ】


腎臓が3つある理由

本来腎臓は左右に一つずつ計二つあるのですが、例の患者さんはこの腎臓がなんと3個も存在していたのです。

これがその患者さんの CT スキャンの画像です。

3つの腎臓の CT

【3つの腎臓の CT】


患者さんの体内では左側の腎臓(写真では右上のもの)は正常な位置にありますが、その下の方にさらに2つの腎臓が存在しています。

この2つは一つに結合していますが、腎臓から膀胱に尿を送る尿管はそれぞれの腎臓から出て、合計3本の尿管が膀胱につながっています。

サンパウロドリン病院で症例報告を担当したレナート・フォレスト医師はこう語っています。

 

「このような症例は初めてです。驚くと同時に、患者の健康に関する懸念もありました。」

 

そんなフォレスト医師の心配とは裏腹に、3つの腎臓があっても患者の健康状態には問題がないようでした。

血液検査の結果、腎臓の機能は正常で、ギックリ腰以外は健康状態は全般的に良好だったのです。

そのため、患者は経口鎮痛薬を投与された後、そのまま帰宅することとなりました。

フォレスト医師は言います。

 

「患者の腎機能は完全に正常でした。腰痛の原因は既に診断済みで腹部超音波検査とCTスキャンの結果にも問題はなく、他の検査でも異常は見つかりませんでした。」

 

この症例報告を担当した医師グループの話によると、患者の腎臓は珍しく健康を損なわない形の先天異常で、おそらく胎児の成長過程で原始的な腎臓器官が2つに分裂したのだと考えられます。

トリプルキドニー

非常に稀なケースではありますが、こうした症例は過去に何度か報告されており、「トリプルキドニー」と呼ばれています。

本当に稀な症例であり、過去100年間の医学文献を全て検索しても、合計で100例に満たないと言われています。

古くは1915年の文献にも登場しており、「トリプルキドニーの完全な症例は腎臓病の中でも極めて珍しい」とされています。

もっとも今回の症例研究でも述べられている通り、トリプルキドニーを持つ人は自身の状態に全く気づかないことが多いのです。

フォレスト医師たちは

 

「こうした人は通常何の症状もなく、今回の症例と同様に、ほかの理由で検査を受けて初めて判明する可能性があります。」

 

と述べています。

このように、内臓の数や位置が変わっても健康を損なわない例は他にもあります。

例えば内臓逆位症という病態です。

この内臓逆位症は体内の器官が通常とは反転した場所に存在する病気です。

例えば心臓が右に、肝臓が左にあるような状態です。

トリプルキドニーと同様、内臓逆位症の人も何らかの理由で検査を受けない限り自身の状態に気づかない場合が多いのです。

 

余談ですが、この原稿の監修医師大動脈と下大静脈が左右逆になっています。

これも左側(さそく)下大静脈という立派な名前がついており、非常に稀と言われています。

トリプルキドニーと同様、特に症状なく、同じく腰痛で撮った腹部CTで判明しました。

 

このように、医師ですら自分の内臓について知ることは困難なため、一般の方にとっては自分の臓器といえど、内臓は未知の世界だと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は非常に稀なトリプルキドニーを中心について、医学論文をもとにお話ししました。

自分の体を知ることはなかなかむずかしいですが、健康な時こそ「人間ドック」などで検査してもらい、自分の体調や内臓について調べてもらうといいかもしれません。

健康は健康ですが、内臓についての意外な事実を知ってしまうかもしれません…

 

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【参考文献】

  1. Man Discovers He Has Three Kidneys While Having A Scan Of His Bad Back
  2. Medina-Pestana, Jose O., and Renato D. Foresto. "Three Kidneys." New England Journal of Medicine 382, no. 19 (2020): 1843-1843.
  3. Adekanmi, A., O. Atalabi, and I. Ukachukwu. "Supemumerary Kidney (triple kidney) with horseshoe component: a case report." (2013).

【監修医師】

  1. Dr. KyoJi: 医師11年目の外科医, 新宿の医局→フリーランス, 《Twitter》https://twitter.com/dkyoji
  2. 小山翔平: 整形外科専門医