【自発的発酵症】世界にたった一つの奇跡の膀胱

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皆さんは膀胱についてどれだけ知っていますか?

膀胱は腎臓で作られたおしっこを溜める臓器ですが、実はその膀胱について世界中で奇妙な患者の報告が出ているのです。

今回はそんな膀胱に関するあっと驚くような患者さんの報告を2つ、科学論文を元にお伝えしていきます。

 

  1. とある中国人男性の例
    1. おしっこを我慢し続けた結果…
  2. とあるアメリカン人女性の例
    1. 膀胱で醸造
  3. まとめ

 

とある中国人男性の例

皆さんはお酒を飲むとトイレに行く回数は増えますか?

「お酒を飲むとおしっこに行きたくなる!」

という人がほとんどなのではないでしょうか?

そんな中で「おしっこを我慢するとどうなるのかなぁ…」と考えたことがある人は少ないでしょう。

このブログでは以前“女性が尿意を我慢した時にどうなるの?”ということを特集した動画をアップしておりますが、今回はさらに成れの果ての患者についてのお話しです。

【参考】女の子がおしっこを我慢し続けるとどうなるの?

おしっこを我慢し続けた結果…


とある中国人男性浴びるほど酒を飲んだ上で、おしっこを18時間も我慢した挙句に膀胱が破裂したという報告があるのです。

 

中国の地方紙の報道によると、フーさんという名の40歳男性は、その日の夜、飲み会でビールのボトルを10本も飲んで一度もトイレに行かず寝落ちしたそうです。

「トイレに行きたいなぁ」という気持ちもあったようですが、眠気の方が強く我慢してしまい、最後には飲みすぎて意識を失ったのでしょう。

 

その18時間後に目覚めると、焼けるような腹痛を訴えたフーさんは浙江省(せっこうしょう)にある病院に搬送されました。

その病院で CTスキャンをしたところ彼の膀胱は3ヶ所も裂けていることがわかったのです。

膀胱破裂による強烈な痛みでフーさんは横になることすらできず、何度か排尿を試みたものの腹部に溜まった尿が排出されることはありませんでした。

 

さらに最悪なことに、3つの裂け目のうち1つは腹腔に向かって破れていたのです。

腹腔とは小腸や大腸などの臓器が入っている空間です。

その腹腔内に膀胱から尿が流れ込んでしまっていたため、腹膜炎という怖い病気を発生するリスクがあり、すぐに治療しなければ命に関わるかもしれないと医師は判断しました。

地元メディアによると、運良く医師らの手術によってフーさんの命は助かり、フーさんは元どおり回復した後退院となったそうです。

 

膀胱の破裂まで及んでしまう患者さんは非常にレアなケースではありますが、地元の病院には年に一度は似たような患者が現れるといいます。

またアメリカクリーブランド・クリニック泌尿器科医師ブラッドリー・ギル先生

「アルコールを飲むと通常よりも多くの尿が作り出され、膀胱が満杯になりやすいのです。」

といっています。

ギル先生はさらに、

「人は酔っ払うと膀胱が尿でパンパンになったことに気づきにくくなる。」

と話しており、その結果『膀胱の破裂』につながることがあると教えてくれています。

とあるアメリカン人女性の例

もう一つ、膀胱にまつわる奇妙なお話をしましょう。

人類史上初めておしっことしてお酒が造られる女性の報告です。

彼女は思わぬ条件が重なったことで、なんと膀胱が小さな醸造所となってしまったのです。

 

この異様な症例はアメリカピッツバーグ大学メディカルセンターの医師が肝臓移植を待つ61才の女性を調べた時に明らかとなり、2020年Annals of Internal Medicineに掲載されました。

女性は肝硬変糖尿病を患っており、そのいずれもが、一般的には過度のアルコール摂取、もしくはアルコール中毒と深く関係する病気といわれています

しかし、女性は

 

“アルコールはほとんど飲んだことがない!”

 

と主張します。 

とはいっても、尿検査で何度もアルコール陽性という結果が出たため、医師は当然のことながらこれを疑ってかかりました。

複数の医師が「アルコール依存症の治療を受けるように」とアドバイスしましたが、彼女はやはり“全くお酒を飲んでいない”と言い張るのです。

 

そしてある医師が、興味深い事実を突き止めます。

アルコール分解時に生成されるはずのエチルグルクロニド硫酸エチル尿検査で検出されていないのです。

また血液からもアルコールが検出されません

飲酒によるアルコール摂取の場合、胃や腸からアルコールが血液中に取り込まれ、その血液が肝臓に運ばれることでアルコールが分解されたり、一部はそのまま腎臓でおしっことして排出されます。

そのため普通は血液中にアルコールが存在しているはずなのです。

しかし、彼女の血流中にアルコールは存在せず、彼女が“自分が酔っている認識がなくても仕方ない”ということが判明しました。

膀胱で醸造

では、なぜ尿からアルコールが検出されるのでしょうか?

この奇妙な状況を解明するため、医師は尿をさらに詳しく調べることにしました。

すると女性の膀胱酵母の一種であるカンジダ・グラブラタ菌が繁殖していることが分かりました。

 

この菌は醸造に用いる酵母である Saccharomyces cerevisiae (さっかろまいせす せれびじえ)に近い菌で、人体にごく普通に存在しています。

医師たちは菌のサンプル培養皿に入れて特定の条件下に置き、発酵が起きるかどうかを調べました。

するとなんと、ある条件でサンプルがアルコールを生成することが判明したのです。

そして、例の女性の膀胱はその菌のおかげでビール醸造所のような働きを持っていることも判明したのです!

 

アルコールを作る時には、ビールにしろ蒸留酒にしろ、酵母が必要で、さらにそれらが発酵するための無酸素状態という環境も必要です。

無酸素状態では、酵母の発酵によってからアルコール二酸化炭素が作られるのです。

 

この知識をもとに例の女性に当てはめて考えました。

彼女は糖尿病の治療をせず、尿に糖が含まれていました。

そして、もともと膀胱内には酸素は存在せず無酸素状態となっています。

そこにさらに偶然にも彼女の膀胱内に酵母が繁殖してしまい、体内醸造所が完成したというのです。

様々な偶然が重なり、発酵というアルコール製造にとって理想的な環境が成立したのです。

 

「この条件を生み出した最大の理由は患者が糖尿病の治療を怠ったことだと思います。ブドウ糖濃度が高い膀胱の環境が、酵母の増殖と活動にとって絶好の条件となるからです。」

 

と論文の著者の一人の病理学准教授タママ・ケンイチ氏は述べています。

さらに、

 

「糖尿病はそれ自体が免疫不全の原因として知られています。本来なら酵母菌が膀胱内に侵入してくれば免疫が働き膀胱内から菌は駆逐されるはずですが、今回のケースでは免疫機能が低下しており、酵母菌が膀胱内で活発に繁殖することが可能だったのでしょう。」

 

と分析しています。

研究チームはこの女性を「尿自発的発酵症」あるいは「膀胱発酵症」世界で初めての症例と主張しており、

 

自発的発酵効果他の消化器官ではいくつか記録例がありますが、膀胱での症例は過去にありません。このような条件ではアルコールが血液に入ってしまうことも多く、酔いを感じたり酩酊するほか、気分が悪くなり、嘔吐、感覚麻痺、記憶欠落、さらには意識を失うことさえあります。彼女の血液内にアルコールが回らなかったのもすごい偶然だと考えられます。」

 

とまとめられています。

膀胱の構造酵母菌の仕組みが合わさった非常に稀な症例だったのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は膀胱にまつわる様々な報告例を、医学論文を元にお話ししました。

皆さんもおしっこは我慢しすぎずに定期的に排出するようにしましょう!

 

このブログでは様々な医学情報をお伝えし、みなさんの医学知識を増やすお手伝いをしています。

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【参考文献】

  1. Off the Deep End: Man's Drunken Lake Dive Bursts His Bladder
  2. Doctors Diagnose The First Case Of A Woman Who Pees Alcohol
  3. Kruckenberg, Katherine M., Andrea F. DiMartini, Jacqueline A. Rymer, A. William Pasculle, and Kenichi Tamama. "Urinary Auto-brewery Syndrome: A Case Report." Annals of Internal Medicine 172, no. 10 (2020): 702-704.

【監修医師】

  1. Dr. KyoJi: 医師11年目の外科医, 新宿の医局→フリーランス, 《Twitter》https://twitter.com/dkyoji
  2. 小山翔平: 整形外科専門医

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