熱が出たらロキソニンを使ってはいけない秘密

Medivery


現在、流行しているコロナウイルスをはじめ、普段の風邪やインフルエンザでも有効な風邪薬の使い方について医療監修を基にした情報をお伝えします。

先日フランスのヴェラン保健大臣がツイッターで

 

「新型コロナウイルス感染症に罹ったらイブプロフェンなどの薬を飲まないように」

 

という趣旨の発言をしました。

https://blog.medivery.jp/youtube/post-170.html

どのような発言か翻訳しますと

抗炎症薬(イブプロフェン、コルチゾンなど)を服用することは、感染を悪化させる要因になる可能性があります。発熱がある場合は、パラセタモール(アセトアミノフェン)を服用してください。すでに抗炎症薬を使用している場合、または疑わしい場合は、医師に相談してください。

という発言です。

コルチゾンというのは、いわゆるステロイドと呼ばれるものであり、解熱効果はありますが細菌やウイルスと闘う免疫作用を抑える効果があり感染症を悪化させる危険があるため、感染症と分かっている状態では確かに一部の例外を除いて使用することは推奨されません。

日本ではステロイドは医師の処方が必要で、薬局などでは手に入らないことになっています。

 

イブプロフェンは非ステロイド系消炎鎮痛薬、通称NSAIDs(エヌセイズ)と呼ばれるもので解熱効果があります。

例えばロキソニン・イブプロフェンなど感染症などの熱が出る病気のときにはよく処方される薬剤であり、ロキソプロフェンは2011年からはロキソニンSという商品名で市販薬が発売開始されています。

発熱で病院を受診した際にも、ロキソニンやブルフェンなどのNSAIDs(エヌセイズ)を処方されることは多いかと思います。

それでは、これらのNSAIDs(エヌセイズ)はコロナウイルスの際に使用しない方が良いのでしょうか?

また同じ発熱でも使い分けはできないのでしょうか?

様々な医学論文からその答えを探していきましょう。

 

  1. 熱を下げるメリットは?
  2. どうやって熱を下げるのが良いのか?
  3. イブプロフェンは新型コロナウイルスを細胞に侵入しやすくする?
  4. 重症感染症にNSAIDs(エヌセイズ)を使うと死亡率が高くなる?
  5. エヌセイズは使わない方が現在のところは安心

 

熱を下げるメリットは?

そもそも薬で熱を下げることによるメリットはなんでしょうか?

もちろん発熱があると体は辛いので、無い方がいいという意見が多いと思います。

熱を下げることによって、当然ですが発熱そのものによる倦怠感が取れますし、発熱に伴った頭痛、関節痛、筋肉痛といった症状も緩和されます。

また体温が1℃上がるごとに体の酸素消費量は13%増えると言われており、熱があると何もしてなくても体には負担がかかってしまいます。

そのため例えば心臓病や肺の病気など慢性疾患のある患者さんでは代謝を抑え持病の悪化を防ぐ目的で、解熱薬を使用することは有用であると考えられます。

どうやって熱を下げるのが良いのか?

次に熱を下げたい時の注意点についてお話しします。

熱を下げる方法は大きく分けて2つあります。

 

1つは外部から体を冷やすこと(クーリング)です。

効果的な冷やし方は血流の多い首や太ももの付け根に冷たいタオルなどを当てて冷やすのが有効です。

 

もう1つは先ほどから出ている解熱薬を内服することです。

主にアセトアミノフェン、NSAIDs(エヌセイズ)の2種類が一般的に知られています。

NSAIDs(エヌセイズ)は先ほどご紹介したとおり、一般名称としてはロキソニンやブルフェンなどで知られています。

アセトアミノフェンは商品名で言うとタイレノールAやバファリンルナJなどがあります。

これらの薬は飲んでから1〜2時間後に解熱効果が出てきて、4〜6時間後には効果が薄れていきます。

そのため発熱が続く場合は1日に3回程度定期的に飲むことになりますが、その分副作用の可能性も高くなります。

NSAIDsでは胃潰瘍、腎障害などの副作用が多く、アセトアミノフェンでは大量服用で肝機能障害がみられることがあります。

解熱薬を内服する際は医師や薬剤師の指導による用法用量を守って使用するようにしましょう。

イブプロフェンは新型コロナウイルスを細胞に侵入しやすくする?

それでは新型コロナウイルス感染症に罹ったときにNSAIDsを使用すると何か問題があるのでしょうか?

結論としては「現時点では分からない」としか言えません。

医療監修担当医が調べた限りでは、新型コロナウイルス感染症に対してNSAIDs(エヌセイズ)の影響を検討した研究は現時点では報告されていません。

いくつかの憶測が論文に掲載されてきておりますのでそちらをご紹介します。

SARSや、新型コロナウイルスは肺や腎臓などから分泌されるアンジオテンシン変換酵素2を介して標的細胞に結合し侵入することが分かっています。

ランセット誌では「イブプロフェンが体内のアンジオテンシン変換酵素2を増やし、これによって新型コロナウイルスの感染が増強されるのではないか」という仮説が紹介されています

ヴェラン保健大臣はこの仮説から「イブプロフェンなどのNSAIDs(エヌセイズ)を避けるべき」と発言したものと思われます。

しかし、これは実際に医学的に確かめられたわけではありませんので、今後の検証結果を待たなければなりません。

重症感染症にNSAIDs(エヌセイズ)を使うと死亡率が高くなる?

しかし、新型コロナウイルスにかかわらず、感染症全般に関するNSAIDs(エヌセイズ)の使用についてはすでに否定的な報告が多くあります。

新型コロナウイルス感染症ではありませんが、インフルエンザや敗血症、いわゆる感染症により生命を脅かす臓器障害が引き起こされる状態の際にはNSAIDs(エヌセイズ)は使用しない方が良いかもしれません。

動物実験ではすでにインフルエンザに対して解熱剤を使用した方が使用しない場合と比較して1.34倍死亡率が高かったとする報告があります。

インフルエンザにNSAIDs(エヌセイズ)を使用すると、特に子供で重篤な状態になることが知られており、医療界では一般的に子供へのNSAIDs(エヌセイズ)の処方は控えようという流れになっています。

2012年の研究では敗血症の患者にNSAIDs(エヌセイズ) を使用した場合に死亡率が高くなったという報告もあります。

なお、この研究ではクーリングによる解熱は死亡率を悪化させなかったとのことです。

2015年に行われた別の研究ではアセトアミノフェンの使用は重症感染症が疑われる患者への使用で特に影響を与えなかったというものもあります。

NSAIDs (エヌセイズ) は使わない方が現在のところは安心

ということで、新型コロナウイルスに特化したエビデンスは今のところなく仮説のみですが、感染症全般で考えれば確かにNSAIDs(エヌセイズ)を使うと状態が悪くなる可能性が否定できません。

ロキソプロフェンなどのNSAIDs(エヌセイズ)は薬局などで手に入りやすい薬剤ですが、安易に飲むと副作用の方が問題になることがあります。

熱の原因が感染症と分かっている場合には、自己判断で飲まないようにせず、医師や薬局の薬剤師に確認するようにしましょう。

【参考文献】

  1. Are patients with hypertension and diabetes mellitus at increased risk for COVID-19 infection?
  2. The effect on mortality of antipyretics in the treatment of influenza infection: systematic review and meta-analysis
  3. Association of body temperature and antipyretic treatments with mortality of critically ill patients with and without sepsis: multi-centered prospective observational study.
  4. Acetaminophen for Fever in Critically Ill Patients with Suspected Infection.

【監修医師】

  1. Dr. KyoJi: 医師11年目の外科医, 新宿の医局→フリーランス, 《Twitter》https://twitter.com/dkyoji
  2. 小山翔平 (Shohei Oyama): 整形外科専門医, おやま整形外科クリニック院長 《Web》https://oyama-seikei.gassankai.com/

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